2014年度第4回立教大学医学物理セミナー
『がん疼痛治療と医療用麻薬の適正使用』
オピオイド鎮痛薬は緩和医療をはじめとする疼痛治療の主役を担う薬剤であり、モルヒネ、フェンタニルならびにオキシコドンを中心にその使用頻度は増加しつつある。しかしながら、オピオイド鎮痛薬は優れた鎮痛作用を持つ反面、非疼痛下での長期使用により強度の依存を形成するという特性から、その使用が躊躇されることもあり、本邦における使用量は相変わらず他の先進諸国と比べ圧倒的に低いのが現状である。一方、疼痛緩和を目的にオピオイド鎮痛薬を適切に使用した場合、その精神依存はほとんど問題にならないことが基礎研究および幅広い臨床経験より明らかとなっている。したがって、オピオイド鎮痛薬に対する“乱用・中毒”といった誤解を改めることは、臨床医の積極的なオピオイド鎮痛薬の使用を促すのみならず、患者とその家族の麻薬使用への不安を解消し患者のquality of life(QOL)の向上に大きく貢献できるものと考えられる。そこで本セミナーでは、医学物理とは遠く離れた“薬学”の立場からがん疼痛治療におけるオピオイド鎮痛薬の適正使用の意義を概説し、がん医療における薬剤師の役割について紹介したい。
講師
東京理科大学 薬学部薬学科疾患薬理学研究室 吉澤一巳 先生